ある朝、突然壊れました【1月】

体調不良で休ませて頂きます


電話一本で、休みを申請。


有給の更新は1月。
去年の分の残った有給に

今年の分をプラスすると

残り37日も休めます。
有給を取ることについては

寛大な職場。
忙しい時期なのに

すでに三日も休んでしまった。



昨年会社からは

新しく昇進した

ポジションの辞令が出た。
昇進をしたばかりなんて

普通の人なら

うきうきなのかな・・・


でも、もう無理です。 

私は無理。
私は本当に

ただの事務員のおばちゃん。
ルーティンワーク+ α が

できるほどしか能力は無い。


なのに会社はここ5年ほど

私の知力体力以上の

課題を山ほど降らせ

命からがら課題をクリア。  

終われば次の課題。
いくつかクリアすれば

分不相応な昇給とボーナス

ステキな肩書と名刺
これは新手のリストラかしら

と勘ぐってしまう。



帰宅は早めの八時半。
残業が多いと

評価がよろしくない。
家に帰りつくと

玄関先で涙があふれるが
そんな事をしてる場合じゃないと

コンビニご飯と入浴を済ませる。
会社のPCを立上げ

メールのチェックとレポート制作。
気が付くと時間は丑三つ時。
睡眠時間は、4時間弱。


きっと能力がある人は

こんなのさっさとできると思う。
私は無理

そんな器用な事もできないし

気楽にも考えられない。
自分の能力以上の負荷。



私はその朝 会社を休んだ。



先日もらったボーナスは

使う予定もありません。
今年からポジションに合わせて

月のお給料は

昇給分+さらに5万円アップ。

ふつーの何のとりえもない

事務のおばちゃんが

もらう額じゃありません。
給料アップに

プレッシャーを感じてしまう

そんな弱い人間です。



そんな恐怖の中で

うとうと眠りにつこうとすると
急に体がガクッとなり

唯一の救いである眠りから

覚めてしまう。
そのまま再び眠りの中へ
そんなことが

一晩に何度も起きる。



はっと 完全に目を覚ますと

呼吸ができない。
どうやって

息をしていいか分らない。
胸を掻きむしる。
飛び起きる。
苦しいのに息ができない。
もがき苦しんで

ベッドから転がり落ちた瞬間
空気が胸に入ってくる。 

今度は過呼吸になりそう。
涙と鼻水でぐしょぐしょだ。



唯一の救いである眠りまで

私から奪われていく。
狭いワンルームの一室で

夜中なのに叫んでしまった。
わーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
時計を見ると3時35分。 

まだ眠れる。
そのまま眠りにつく。



あさの6時に目覚ましが鳴る。
会社行きたくない 

行きたくない・・・・・・
と声に出してみる。


とことん自分の気分を

下げるだけ下げてみる。
死ぬか、この年齢で職を失うか
わけの分からない選択が

頭に浮かぶ。
三分のいち程壊れた心で

自分をさらに追い込む




休み明け

会社に何とか行けたのだが
あさいち 

5日間の研修に出るようにとの 

上司命令メール。
見た瞬間

頭の中は無理無理無理でいっぱい。
これ以上無理。



心臓がバクバク!!!!!!
目の前が真っ暗になる。
トイレに駆け込んで便座に座る。
深呼吸をして少しは落ち着く。
頭が回らない。
そして

壊れたまま回復できなかった。



上司の部屋は

いつもドアが開いてる。
「少しお話し良いですか」
了承の声に

私は開いていたドアを閉めた。



とうとう辞めると

言ってしまいました。
私と同じ・・

それ以上に忙しい人だって

いっぱいいる。

ただ私が

ついて行けなくなっただけ。
退職の意思を

上司に伝えているのだが

自分が何を話しているのか

全く分からない。
それでも私の口からは

いつも通り冷静な言葉が

よどみなく発せられている。
退職理由は、親の介護の為。


少し離れたところに住む

一人暮らしの父親は

確かに体が悪かった。
入院手術も決まっていた。
でも退職するほどの事でもない。
私はこの場から逃れる為に

天才的なお涙頂戴の嘘をつく。



40分ほど話は続いて

3月退職に決まった。
もう研修にいかなくても良い。
それだけで

私の心は満たされた。
退職と引換に

この年齢で収入を失ったのだ。